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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)540号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

論旨は、所論一五二票入りの投票箱を一〇時間も開票場外の廊下に無施錠のまま放置していたこと、及び開票立会人中二名は当選人の決定発表を待たず選挙長に認印を預けたまま退場帰宅していることは、選挙の公正を害する所論不正行為発生の可能性があつたものとの趣意を主張する。しかし、原判決が適法に認定した事実に基いて勘考すれば、原判示の場合所論不正行為の介入する余地のなかつたものと判断せざるを得ないから(所論廊下も開票場の延長と認めて差支ない)、右と同趣旨に出でた原判決には所論の違法はないものといわなければならない。所論引用の判例は本件に適切ではない。

第二点について。

論旨は本件選挙において第二七投票区の投票が他の投票区の投票と分割して点検された結果投票の秘密が侵されたことに帰着し、これを是認した原判決は憲法一五条三項の解釈を誤つた違法があると主張する。

しかし、所論違憲をいう点はその実質は公職選挙法六六条二項違反の主張に帰着するものと考える。そして本件選挙において右のような投票点検が行われたこと、それが右法条に反することは所論のとおりであるが、原判示の場合そのような違反があつたからといつて本件選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあつたものと認められないから、右と同趣旨に出でた原判決の判断は、結局正当であつて、所論は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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